植物が秘める能力


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クスノキ…成分の樟脳は起死回生の薬
 〜『草木筆まかせ』より抜粋〜

 有史以前、わが国にどのような樹木が繁茂していたのかを知るには、埋没林や出土する木の実を調査する方法が確実だろうと思います。3世紀末、中国で成立した『魏志倭人伝』には、数種の樹木の名前が記載されていますが、樹木の種類を確定するにはまだ問題があるようです。

 クスノキは生命力が強く、長寿の木で、巨木になります。樟材はカンファー(樟脳)を含み特有の芳香があり、また防虫、防臭作用があるので、中国では古く棺材として珍重されたといわれています。わが国に古く渡来した請来佛は、ビャクダン(白檀)が多く使われていますが、飛鳥・白鳳時代の代表的な木彫佛はほとんどクスノキが使われているとのことです。わが国には、ビャクダンが産出しないため、芳香のあるクスノキが使われたのだろうといわれています。

 これに対し、木材研究家の満久崇麿博士は、古代のほとんどの仏像は彩色仕上げで素木(しらき)造りがないことから、材の放つ芳香にこだわっていたとは考えられないと述べています。むしろ、クスノキを霊木として崇拝していたこと、また、古くからクスノキを什器その他の資材として使いなれていたことにとると記しています(『木のはなし』、思文閣出版)。奈良時代になると、木彫佛ははとんどヒノキ材が用いられています。

 古代の木彫佛の樹種は、それが素木造りの場合、肉眼でも簡単にわかることもありますが、時に佛像から材片を採取して顕微鏡で細かく調べてもわからない場合があるそうです。広隆寺の弥勒半跏思惟像の樹種にクスノキ、ヒノキ、マツの諸説があるのはこのようなことに因ります。

 クスノキの主成分であるカンファーは防虫剤、薬品として用います。今でも、起死回生の手段を意味して「カンフル注射をする」といいますが、樟脳が強心薬として使われていたからです。樟脳はナフタリンと並んで、衣服防虫剤として長く使われてきました。大切にしまわれていた衣服をとり出して着た時、匂ってくる樟脳によって何となく気分があらたまったものです。現在は安価なパラジクロルベンゼンが取って代わりましたが、安全な衣服防虫剤であることに変りありません。次は古来の製法や薬理に触れたいと思います。

〈樟脳のはなし-その1・了〉
近藤さん

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