植物が秘める能力


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クスノキ…古来の生薬代用品は沙羅双樹?
 〜『草木筆まかせ』より抜粋〜

 樟脳は、すでに17世紀頃から九州産(主として鹿児島産)のクスノキを使って製造されていました。17世紀の半ばには毎年4万斤(2万6千kg)の樟脳をオランダ人に売り渡したと記録されており、宝暦4年(1754)に刊行された『日本山海名物図会』に、当時の樟脳製法の図が掲載されています。

 水蒸気蒸留法と呼ぶ方法で、細切したクスノキを釜の中で水と煮て、水蒸気と共に出てきた樟脳を冷却、晶出させて集めます。戦前頃まで、九州のいたる所で樟脳製造所を見ることができました。当時は主として台湾産クスノキを原料に使っていたようです。
 クスノキの花芽

 樟脳がどうして強心薬として使われるようるようになったのか、私の獨断を交えて述ベてみます。古い漢方処方には、時に竜脳(*)が使われています。処方に冰片または氷片とあるのは竜脳のことです。竜脳はフタバガキ科の竜脳香(Dryobalanops aromatica)の材に含まれる芳香成分で、中枢神経興奮作用があり、意識障害に処方します。主成分はボルネオールで、少量の樟脳を含みます。竜脳香はわが国に自生していないので、竜脳は渡来薬として珍重されたのでしょう。江戸時代の漢方書を見ると、「竜脳は唐口という物を用いよ。極白色をした白手はあまり効果がない」とあります。唐口は輸入品のことで、白手というのが樟脳だった可能性があると考えています。薬理はこの次の回にします。

〈樟脳のはなし-その2・了〉
近藤さん

【*薬研注釈】
 竜脳/龍脳(りゅうのう)に関し、近藤先生が割愛された内容を付け加えます。竜脳/龍脳はフタバガキ科(Dipterocarpaceae)のDryobalanops camphora COLEBR.の析出物である。フタバガキ科は二つの羽根が生えた実(di=2, ptero=羽根, carp=実)をつけるdipterocarpus属に由来し東南アジアの熱帯雨林で最も優占している種類。ちなみに、お釈迦様が亡くなったときにお墓の周囲に植えた沙羅双樹(さらそうじゅ)の木はフタバガキ科の一種で北インド〜ネパール低地に分布するShorea robusta(ヒンドゥ語でサール)のことです。
 沙羅双樹・ナツツバキ/これも大木になる
加えて、勘違いする方もおられるので述べておきますが、李時珍は『本草綱目=中国明代萬暦24年刊、明以後の本草の王座を占め後生への影響力大』において龍の條に「龍涎(りゅうぜん)を掲げている。これは「龍涎香」(りゅうぜんこう)AMBRA GRISEAのことで、マッコウクジラ科(Physeteridae)のマッコウクジラ Physeter catodon L. などの腸結石であるので混乱の無いように解釈して下さい。

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