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〔研究レポート〕 脚光を浴びる機能性野菜 JAPAN ASSOCIATION FOR HERBS, 96, 17-26, 2006. より再編。 ヤーコンについて 〜その3:栄養素と調理について〜 「ヤーコンについて1,2」において知り得る情報の一端を示したが、この間にも続々と新たな判明がなされており、適宜お知らせする予定。 その前に先日車中のラジオで耳にした話がたいへん興味深かったので、かいつまんで述べる。 栄養学の専門家の話ではなかったが、このところ成人病が増えている理由のひとつに栄養素の不足が語られ「統計的に若年層に栄養失調が見られる」ということ。 「栄養バランスを考えた食材をきちんと調理し、朝食こそ大切に」という、当然と云えばまったく当然な結びであったものの、一人暮らしの学生や単身赴任者など、 青少年や働きざかりの人達にあてはまるケースが多いという内容で、カロリーは充分過ぎるほど摂っており、痩せ衰えてもいないのになぜ栄養失調? これこそが問題なのである。 複合生活習慣病 戦後数十年来、西洋風の食文化への劇的な変遷があり、まして現代はミネラルバランスを保ちにくい背景がある。 ひとつには手間のかからない加工食品や手軽な保存食が生鮮食の摂取をはばみ、必須アミノ酸をはじめ人体に不可欠なアミノ酸の原料を自らに与えていないこと、 ミネラルバランスについて考える家庭の食卓が既に崩壊していること、これらが現実に危機的状態にあるという現象。 栄養素については拙稿でも述べてきた通り食素材そのものに根源があり、 朝食抜きとか調味料を必要以上に用いた味のコントラストが強いファストフードやジャンクフードなどで空腹を満たす一方、 サプリメントに頼っている人がいかに多く、単にカロリーだけの摂取になっている現実を如実に示すものであろう。 そしてとうとうメタボリックシンドロームが大きく叫ばれてきた。 メタボリックシンドロームはちょっとお腹が出てきたなどの軽微なものでは無く「死の四重奏」とも呼ばれる内臓脂肪症候群の複合生活習慣病(代謝症候群)であり、 厚生労働省の調査では、高血圧患者数は3,900万人、高脂血症は2,200万人、糖尿病(推定予備軍を含む)は1,620万人、肥満症は468万人と云われており、 恐ろしいことに患者数は年を追って急激に増加している。 “死の四重奏”、肥満症・高血圧・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病はそれぞれが独立した病態ではなく、肥満(特に内臓に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満)が原因とされ、 この結果さまざまな病気が引き起こされやすくなった状態をメタボリックシンドロームと総称1)する訳で、東洋医学の観点では典型的な「未病の病態」にあるものと考えられ、 まだ統計として出ていない予備軍の数は想像を遥かに超えるものと推察できる。 強いて関連づけるものではないが、先般大阪で開催された未病システム学会学術総会抄録集(2006.1.)1)において非常に高度な先端医療が数多く述べられており、 ストレスと疲労の関連でも今までに無い報告があった。 しかし基軸は正しい食事があってこそに尽きる。 「朝食を摂る暇が無いので野菜ジュースを飲む」とか「疲れが抜けないのでサプリメントや健康ドリンクを飲む」などは身体に良い作用はあまり期待できるものでは無いであろう。 これらを「朝食もどき」にして目覚めていない身体機能をたたき起こし無理矢理アクセルを踏み込むような行為は、 いわば心因性ストレスに向かって暴走し、更なる悪循環に嵌り込む懸念が大である。 「メタボリックシンドロームの上流に、個人の体質に影響を及ぼし生活習慣をゆがめるストレスの潜在があると考えられる2)」 とは云え、不幸にして健康診断(一次健診)で指摘を受けた方でも悲観に及ぶことは無い。 メタボリックシンドロームにみられる危険因子の重複が動脈硬化疾患の重要な因子であることが社会的に認められ、2001年の労災保険法の改正にともない、 定期健康診断で血圧、肥満、血糖、血中脂質の4項目すべてに異常が見られる“死の四重奏”を抱えた人に対し、 二次検査を受ける費用や特定保健指導を受けた際の費用について労災保険が給付されることになっている。だが云い方を替えればそれほどに重大な社会現象になっている訳である。 これらに対し、ヤーコン食が救世主のひとつとなる可能性は高い。 ヤーコンの栄養素
私が過ぐる2001年に試作し、2006年に追試したデータを表1に示す。目的はヤーコンのフラクトオリゴ糖分解抑制と機能性の相乗する効果の調査にあり、 アピオス・アメリカーナ単一物について同様におこなった分析試験結果と比較してもヤーコンの特質が現れているものとの推測から敢えて示すものである。 (注 : これはヤーコンを主体にアピオス・アメリカーナを重量比7対3で生成し急速薄膜熱乾燥したサンプルでありヤーコン単一物のものではない。 なお、ヤーコン単一物とアピオス・アメリカーナ単一物のそれぞれのデータは現在調査中) 結果について逐一の説明は省くが、水分を抜いて凝縮したことで圧倒的な量のフラクトオリゴ糖が検出されており、 これらは前号で述べたGF2,3,4にあたるものである。 またポリフェノールに関してはタンニン酸ならびにクロロゲン酸として表記している。 これらの成分について分析試験機関にフラクトオリゴ糖GF5〜GF9とヤーコン特有のポリフェノールについて分析を依頼したものの、 残念ながら現時点では不可能との回答で、目下、絶対量の測定が可能な機関において行う運びであることを付加する。 さて、前号で述べましたように腸内フローラはその物質代謝の観点から"第二の肝臓"と見なされ、 共生=シンバイオシス(symbiosis)によってヒトの消化吸収機能や免疫防御機能が調節されることは周知と存ずる。 「腸内フローラのない無菌マウスは腸内フローラが存在する通常マウスに比べて約30%増のカロリー摂取を必要とする事実から、 腸内フローラの定住によって消化吸収効率の上昇などを含めた実に様々な腸管上皮細胞の機能が変異する一方、食物質由来の雑多な外来抗原やアレルギー起因物質、 トキシン、病原微生物などが続々と侵入する腸管粘膜は最も危険な生体局所であるがゆえに、全末梢リンパ球の60〜70%が集結する腸管免疫組織で防御されています。 すなわち腸管は消化吸収臓器であるのみならず、ヒト生体内で最大級の免疫臓器と云えます」3) ここで表1に関する栄養素について少し触れる。5大栄養素のビタミンやミネラル(微量ミネラルを含む)それに6大栄養素の食物繊維、 そして7大栄養素の植物栄養素すなわちポリフェノールが含まれていることは明らかで、とりわけ多いポリフェノール量を示しており、 これがスーパーオキシド消去活性に寄与していることは容易に考えられる。 加えてカルシウムも充分とは云えぬものの不足なく含んでいる。(注 : ただし含有量はアピオス・アメリカーナによる重量比率ゆえのものと推定される) カルシウムは重要な要素であるが飛び抜けて多ければ良い訳では無く、血管に対する生理的作用ではマグネシウムと拮抗しなくてはならない。 一般的にこの理想重量比率はおよそ3対1とされるが、それに近いマグネシウムが確保できている。 また、植物から摂取できる必須アミノ酸9種ほか、健康維持に欠かせないアミノ酸含有が認められ、微量ミネラル含有やビタミンなどにおいて多くのことが云えると思うが、 食においてヤーコンだけを摂取するものでは無いなかで見落としてはならぬ点が多々あることにより検討はこのぐらいにして以下省略する。 本稿1〜2を通じて、ヤーコンを食する際は乳製品との組み合わせが理想であると述べてきたが、 カルシウム摂取不足に対し2003年にアメリカで本格的にはじまった「乳製品の1日3サービング」(対象ごとの設定を3品、3杯、3種類摂ること)により、 骨を強化し健康な体をつくる狙いである"3-A-Day"にも合致しよう。 さてその効果であるが、サンプル程度の量しか生成しなかったため今のところは家族だけでビフィズス菌入りヨーグルトにトッピングして食し人体実験をしている報告として、 実に快調ならぬ快腸で1日2回ほど色艶とほのかな香りの通じがあることを申し添えて次に移る。 ヤーコンの調理 ヤーコンはとても優れた食材であり、それゆえに食材加工の既特許が多く受理されていることをあらかじめご注意申し上げる。 とりわけ、非常に簡単な方法はほとんど占有されているが個人でおこなう分には構わないと思うゆえ、是非お試しいただきたい。 ヤーコンは掘り立てのものを生で食べるのが一番なれど期間が限られてしまうのは否めない。保存を考慮すると現在もっとも普及しているのは漬け物への応用であろう。 しかし難しいのはフラクトオリゴ糖の分解が進むため有効に活用できないところにある。そこで有効なヒントを差し上げる。 まずヤーコンを選ぶ際に、太くて大きいものは生食用として早めに食べきる調理に用いるものとお考えいただきたい。漬け物に適するのはやや細く小ぶりのものが適する。 生食の調理例はここに書き出せぬほど数多くあるが、サラダにするにしてもきんぴらなどの加熱に用いるとしても肝心なのは下ごしらえにあり、切ったらすぐに酢水に浸すこと。 好みのドレッシングを決めてあるのならそれにもみ込むのも良く、サラダビネガーも色々あるので好みのものを用いれば宜しかろうと思う。 なお、加熱する食材に用いる場合は酢水に浸しておいたヤーコンは最後に加えるのが要諦。 やってみるとお判りになるであろうが、包丁を入れるとたちまち変色をはじめるので手早くやることで有効成分の損失が防げる。 残り水は黒濁するはずで、これがアクとして嫌われる、本当は勿体無いポリフェノールの水溶液なのだがこの程度の損失はやむをえない。 云い遅れたが、ヤーコンを購入する際に表皮が固く色が黒っぽくなっているものは収穫後おおむね一週間以上経ったもので包丁で剥かなくてはならない。 新鮮なものだとタワシでこすった程度で表皮がとれるのでそのような素材にあたれば幸いであろう。 市場には早くて11月初旬に四国や近畿地方のものが出回り、次いで下旬頃から地物が出てくるようである。 さてここで秘伝を2例ご紹介する。第一はピクルスにすること、第二はジャムにしてしまうこと。ただし既特許侵害になる可能性が大なので、 先に述べたように商品化は困難で仲間内で活用すべきと存ずる。いずれも冷蔵でかなり長期間の保存ができ、有効成分もあまり失われない方法である。 第一の方法では細かくきざむ必要は無く、食べやすい大きさに切って差し支えない。この場合は表皮を剥いて一口大に切ったものを熱湯でしばらく煮る。 箸でつかめる程度にしておくのが肝心で決して煮過ぎないよう注意が必要。 この工程はポリフェノールによる変色をできるだけおさえることにあり、これによるフラクトオリゴ糖の分解に関してはさほどの心配は無用。 次に第二の方法であるが、掘り立てのヤーコンの水分含有量は概ね80%前後で、たんぱく質は1%前後しか含まれていない。 つまり煮物などでヤーコンに熱を通しすぎると煮崩れをおこす。けれどもジャムにするにはむしろ適しているもので、 第一の方法で失敗したとしてもこれで救えるし、酢が苦手な方にも向いているものと思う。図14)を参照されたい。
右の写真のサツマイモと比べヤーコンのたんばく質は極めて微量であり、ペクチンが少ないものと解釈できる。 つまり煮崩れさせた上でジャムの原料にしようというのが狙いである。かんてんの利用なども考えられるが、ここは贅沢に、 しかも有効で美味しくとの理由から「レモン・ペクチン」に挑戦されるのも一考。 <1> 水洗いしたレモンの緑皮を剥き、横半分に切り、種を除いて絞る。 <2> 果汁を別容器に移した後、絞り切ったレモンを5ミリ幅程度に切る。 <3> 切ったレモンを、酸味が感じられなくなるまで水で揉み洗いする。 <4> 水切りした後、5倍量の水を加えて強火で沸騰させ次第に弱火で煮詰める。 <5> いったん取り出して熱をさまし、苦味が無くなるまで<4>をくり返す。 <6> 苦味が消えたら絞って、3倍量の水と<2>の果汁1/3を加え30分間加熱する。 <7> 汁と残滓をなるべく粗い濾し布などで濾し分ける。この汁がレモン・ペクチンとなる(はず)。
作り過ぎたペクチン液を保存するには加熱殺菌を要する。ガラス容器に入れ蓋をして、蒸し器で30分ほどの加熱で充分であろう。 あまり熱するとゼリー化しにくくなるのでご注意を。もし面倒ならペクチン原料が市販されていますのでこちらを使って戴いても良い。 ただしフラクトオリゴ糖をなくさないためにもレモン果汁を入れるのをお忘れなく。実は私の一連の実験で、ヤーコンの有効成分の安定にはレモンが一番良い結果が出た。 けれども商品化へのコストが合わないのを理由のひとつとしてとり止めたものであるが、ご家庭では贅沢に使っていただきたい。 次にジャムづくり。まずヤーコンをざく切りにして煮て溶かし、さめたところへ先のレモン・ペクチンを混ぜれば完成。入れる量はお好みに合わせて結構。 双方ともかなり加熱を経ているので一般的な浮遊雑菌とか微生物に侵されにくい状態にあると思われるが、必要量を食し普段は冷蔵保存が適切。 これをパンに塗り、ビヒィズス菌入りヨーグルトと食べ合わせれば完璧に近いかと存ずる次第。 余談ながらペクチンはその構造の違いによってさまざまな特性をもっており、ゲル化剤、増粘剤、安定剤などとして大部分は食品分野で利用されており、 水に溶けるタイプの代表的な食物繊維でもあって栄養補助食品や医療品の分野までも用途が広がっている。 このように食物繊維としてのペクチンの特性はヒトの健康維持に非常に重要な役割を担っており、整腸作用・下痢や便秘の予防・血液中のコレステロール、 なかでも悪玉と呼ばれているLDLを下げる働きがあり、動脈硬化・心筋梗塞・糖尿病にも良い効果を上げるといわれ注目を集めている。 ヤーコンを漬け物にする場合、粕漬けあたりが第一候補としてあげられるであろうが、味噌漬けも案外イケるもの。皆様の様々な工夫を逆にお教え願いたいところである。 もし入手できたら「山ぶどう」の原液に漬けるのもとても良い味と効能が期待できよう。レシピのかわりご参考までに官能検査評価値を図24)にあげる。 最後に 現在全国で生産され市場に出回っているヤーコンのほとんどはまだペルーA群に属するものであろう。 私は改良を加えられた品種二種の植え付け試験を進めており、これらについて新たなことが判れば折を見てお知らせすることとし、今回の報告の締め括りにする。 更に「ヤーコンについて1〜2」では触れなかった「アピオス・アメリカーナ」に関する知見をいずれ掲載する心づもりである。 まずはウルトラスーパー食材ヤーコンを沢山食べ、健康に過ごしたい。 2006.08.25.
(記事訂正)「ヤーコンについて・その1」の記述中の「在来種」は「ペルーA群種」の間違いです。お侘びして訂正致します。
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